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第17話

ロビーで、ワクイの事務局のKさんが、なにやら難しい顔で、携帯電話で話していた。
受付担当の広報部長が私に近付いてきて「S先生の本をサザン(ホール)に届けていただけるよう手配してくださっているみたいです。」と恐縮モードで語った。

数日前、「事務所にS先生の本をお持ちでないですか?」とメールでKさんに尋ねた。
鹿児島の本屋あたりでは、あまりバレエに関する書籍をおいていない。
欲しい本は注文しないとなかなか手に入らない。でも注文してまで買う人は少ないらしい。
バレエのことを少しでもたくさんの人に理解していただきたいと願っている私は公演時、ホールのロビーで本屋さんを開くことが多い。

今回の舞台は、なんとも恐れ多いことに涌井先生のお口添えで(交換条件?脅迫?)、
S先生にも関わっていただいた(パンフ上で・・・)。で涌井先生の本とS先生の本と並べて本屋さんを開こうと例のように突然思い立ち、Kさんにご尽力いただいた。
Kさんのメチャメチャ迅速な対応で、本番の3日前には、出版社からS先生の本もスタジオに届くことになっていたのだが、何かの手違いで前日にも届いていな かった(鹿児島はやっぱりカライモ時間だ!泣)。私はすっかり諦めていたのだが、当日駆けつけてくださったKさんが、そのことを気づき、さっそく前述のよ うな行動をとってくださったのだ(Kさん、本当にありがとうございました)。
めでたくS先生の本は当然のようにサザン(ホール)に到着した。

のらりくらりの鹿児島県人では、なかなか対応できないことだ。
不在伝票も何もないのに配達先を変えてしまうとは・・・。

そーいえば、私が「あーと」を立ち上げて、用品メーカーと取引をしたいと試みたところ
「九州に推薦してくださるバレエ教室の主宰の先生がいないと取引できない!」と、断られた。僻地(?)鹿児島にはバレエ用品の専門店は一軒もない。だから バレエをする人はシューズ一つ手に入れるのも大変である。涌井先生がお見えになったときに、ちょっと(?)グズグズ愚痴ったことがある。「ちょっと、貸し て!」と携帯電話を望まれた。で、なんと!先生は、本社と思われるところに「箕面の涌井だけど、○○さん、御願い」・・と電話をされた。○○さんは不在 で、変わりに××さんが応対していたようだ。そのときの電話では会社の規約の説明を先生が受けられたように記憶している。しかし、数日後、用品のカタログ とともにその会社からはるばる営業の方がやってきた。当面代替という制約はついてきたものの、「あーと」はメーカーさんと取引を開始する運びとなった。
今ではごく普通のバレエ教室と同様に取引をしてもらえるようになった。
九州に推薦してくださる先生なんか、今現在も、たったの一人もいないのに・・・。


さて、恐怖(?)のホールの扉を開けてみよう・・。
「△#$@&×*×でしょーーー!」
「ア&@+□カ×$*ン:――!!」
出来ることなら、開かずの間にしていたい状況は、勢いを落とすこともなく続いている。
下手の袖で暗くなっていたら、舞台の神様が励ましてくれた・・
「大丈夫だよ。ここの子は皆、本番につよいから・・・」
「でもぉ・・・」
舞台の神様の顔を見上げてみたら、なんとなく青ざめていた。
ドンドンと暗く地中の奥底に撃沈している私。

涌井先生のゲネには出演者に対して漏れなくダメダシがついてくる。
今日もそうなるだろうと・・思っていた。

エンディングのゲネで黒服軍団とともに舞台上に出たとき、私は「ダメ」だった曲は、何曲だったかしら?と考えていた。したら・・全部だった(泣)。

エンディングのMCきかっけがイメージと少し違ったので、MCさんと音響さんとそこの部分をつめる作業にいそしんで、さあ!ダメダシ!と勢い込んだら
そこにはもう・・出演者の姿が見えない。

「え?」と思っていたら、ダメダシがないらしい・・・。

本番までの時間は出来たものの、私の不安は、よりいっそー大きく黒くふくらんだ。

「見捨てられたんだ・・・。」
「全幕なんて非常識すぎることをしようとするから・・見捨てられたんだ。私のせいだ・・。」
誰にも言わなかったけれど、皆はダメダシがないことをとても喜んでいたと思うけれど、
私は涙が出そうになっていた。

あんなに、先生がヒートしていたのにダメダシがないなんて・・・
どー考えても、おかしすぎるよ(号泣)。
S先生から賜ったお言葉がぐるりぐるりと頭の中を回っていた。
「食らいついてくる子だけを私は見る・・・Byバレエの神様。」


クラシックバレエ
あーとかんぱにぃ
〒891-0113
鹿児島県鹿児島市東谷山1-11-22
TEL.099-266-6234

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