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第18話

痩せても枯れても、私は一国一城の主である。心の中の暗黒の不安を皆に悟られてはいけない!!!
これから終演するまでの時間、私の最大のお仕事は、出演者や黒服軍団のテンションが下がらないように、援護することである。
私が暗くしていたら、たちまちに周りのテンションは下がってしまうだろう。
だから、努めて明るく振舞おうと決意して、楽屋に向かった。

しかし、そこは根っから単細胞の私、わざわざ決意などしなくても、明るかった(爆)。
「あーと」なダンサーたち(?)のすがるような瞳が自然に私を導いてくれる。

本番までの時間、楽屋では出演者のメイクなどの最終仕込が、舞台も同様に舞台スタッフの皆さんによって最終的な道具や明かりの調整が行われている。生の舞台を作るとき、関わる人には、実質的に終日、休憩の時間は取れない。

涌井先生の「くるみ」には、「仮面の踊り」という曲がある。歌のついた曲である。
ワクイバレエ団の「くるみ」を大阪で見せていただいたとき、バレエの全幕での生の歌声が私にはとても新鮮だった。鹿児島の皆さんにもその新鮮な感動を味わっていただきたくて、無理を言って歌を佐々木先生に御願いした。
ゲネのとき、佐々木先生の髪飾りが用意できていないことが明らかになった。
無理を言ったくせに、まったく私って詰めの甘い生き物である(苦笑)。
他の貴婦人たちは、それぞれに髪飾りを用意し、程よくキラキラになっている。
ゲストにお願いしたのにキラキラ(?)がほかの出演者より見劣りするのは、良くない。
楽屋に戻り、そこいらにある大きめのビーズを組み合わせきらきらな髪飾りを作り始めた、作業を途中まで見ていたミチが、「後はやります!」と引き継いだ。なかなか役立つやつだ。

午後入りの出演者やゲネでメイクが崩れてしまった人たちに、再びメイクを施していたら、
黒服軍団がなにやら私に近付いてきて「社長、食事をしてください!」とうるさい。
そーいえば、1年前のホール本番で食事をする時間を失った私は、しばらくそのことで黒服軍団をいじめていた。「いいねぇ・・皆はご飯食べる時間があって・・」
当然、本気じゃなく、からかっているのだけど、からかわれたほうはたまったもんじゃないのだろう・・。やたらうるさいから、2口だけ食べた。でも、やっぱり今年も「あたしゃ、2口しか食べられなかったよ・・」ちびまるこちゃん風にからかっていた。
当分続くと思われる(爆)。
本当のところ、小心者の私は本番の日、食事が喉を通らないのだけど・・・。

小心者・・・という表現はどうかと思うけど(爆)。何というか、自分自身でやることなら、いくらでも度胸はあるのだが、舞台に立って実際に踊り、演技をするのは、私ではないわけで、援護は出来ても、舞台上では何もしてやれない。そのことが妙にもどかしい。
サザンという小さなホールではあるけれど、お客様にさらされる・・という現実に全員が対応できるだけの精神をたたきこめただろうか・・・と不安になるのだ。

舞台は一瞬一瞬が勝負でやり直しも効かなければ、いい訳も出来ない。例え、いつか同じ演目で同じ曲を持つ機会が巡ってきたとしても、そのときのお客様は、 もう今日のお客様ではないのだ。だから、どんなに小さくても、その一瞬に懸ける精神を持って踊って欲しいと願っている。いついかなるときも、正々堂々と凛 として舞台に立っていて欲しい。そのための努力を惜しまないで欲しい。

タレントやアイドルの舞台と違って、教室の舞台は、温かな思いで見守ってくれるお客様ばかりではない。冷ややかな視線を浴びることも少なくないのだ。

私が、直接攻められるのなら、いかようなことにも耐えられる自信があるし、理不尽な言いがかりをを突きつけられたら、正面から応戦する能力も備えているつもりだ。

けれど・・個々はどうだろう・・・。私の知らないところで、終演後、誰かに後ろ指を差されることになりはしないだろうか・・・。もっと、私にしてやれることが、あったのではなかろうか・・・、
今更考えても仕方のないことだが頭にこびりついてはなれない。

まして「あーと」は、偉大な3人の神様のお力添えも頂いている。
愛情に報いることが出来ず、結果として泥を塗ってしまうことになりはしないか・・・。

「責任は私が取る!」
決め台詞を背中にしょっていても、内面はこんなもんだ(苦笑)。

 

つづく(次へ)

クラシックバレエ
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