・・・と物騒なタイトルで始まったからといって、庶民派からの転進を考えているわけではないからご安心を・・・。
「あーと」は芸術舞台を目指しながら、舞台装置、ホール使用料にかかる経費を出演者から徴収しない方針を取っている。
バレエ(私的にはホンモノの)を一般に広めるためにチケットに値段も付けてこなかった。
バレエや舞台が好きな私は「バレエの発表会」=「お遊戯会」と思われることが何より悔しい。
バレエや舞台に臨む姿勢でそんなイメージはいくらでも変えてやろうといきまいていた。そういうイメージをつくってきたこれまでのあり方にも憤りを覚えていた。私が思っている本物のバレエは、そんなちゃらちゃらした姿勢では、例え何百万のお金を積んでも学ぶことも踊ることも出来ない。
おし!と、勢いづいてみたものの、悲しいかな現実的にバレエの舞台にはかなりなお金がかかる(苦笑)。
「町中バレエ」で妥協するなら、それほどの資金も必要あるまい。けれども私が目指しているのは「芸術舞台」(分相応と言う言葉が私の辞書にはないようだ・・苦笑)。
生粋の庶民の私にそんな貯えあるはずもない。思いつく限りのありとあらゆる方法を活用し、死に物狂いでその資金を調達してきた。
私一人の力でその資金を生み出すのだから、大変な騒ぎである。私の本業(?)は歯科衛生士。
もちろん、現役を退いてかなりな年数を経ていた(爆)のだが、ころよく(?)、現役時代働いていた歯科医院から声をかけていただいた私は、過酷な毎日の中から、時間を割り振ってせっせと歯科衛生士業務をこなしていた。自分で決めたことだし、働くことは嫌いじゃないし、体力のことを除いては(年齢的に2足のわらじは・・・苦笑)、結構快適に充実した日々を送っていた。かわいい「あーと」なダンサーたちを、一流の舞台に上げるために、どちらかと言うと嬉々として・・・(爆)。
1年たったころだったか「?」な思いがよぎるようになった。
時を重ねるごとに「間違った価値を伝えているかもしれない・・・」。そう、感じる回数が多くなった。
うわべだけの付き合いほど嫌いなものはない。私は自分が言いたいことを吠える分、人様の話も十分に聞くように務めている(これでも・・爆)。
悪気のない出演者からの一言一言・・・。
悪気を感じないから、怒りにもアタイしない。価値を感じていたら口にでるはずのないストレスからくる一言一言。
聞かさせるたび、ただひたすらにテンションだけが落ちていった。
そして、昨年の夏に自主公演無期限休止を宣言した。
何が私のやる気をなくしたのか・・・今はしばらく、皆さんに考えて欲しいと思っている。
稽古を受けるものとしての心構えや舞台に対するそれは、十分伝えられたと思う。ただ、芸術を経験することの価値を伝えられなかったことに気がついた。(私にとって「価値」とは「お金」ではないので、誤解のないように・・・)
形のないものの価値は、経験を重ねることでおのおのが感じるものと思っていた。ちょっと甘かった(いや・・だいぶかも・・爆)。舞台を作るものの務めは舞台を作ることにとどまらない。舞台人を育て、芸術への価値観を一般に浸透させる責任があると勝手に心得ている。価値観の違いや生活水準の違いで片付けたくはない・・と今ひしひしと感じている。
自主公演無期限休止を私自身が決断することで、改めて芸術への価値観を伝える術を模索しようと思っている。
稽古を受けるものの心構えや舞台に対するそれをひたすら伝えてきたときのように、「発展」という、稀に見る大きな舞台を経験した人全員に伝えられたら、それに続く人には自然に浸透するような気がしている。どうか、その術を一緒に考えて欲しい。
自主公演を再開する決断を私自身が下すとき、「あーと」は必ず「進化」する。
「進化」への道が見つかるまで私は決して諦めない。
BY 川留