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第9話

凡人の私達は、どうしても一つの本番をまるで最終目標のように設定してしまう。
だからついつい、一つの作品を無難に無難にまとめようとしているかもしれない。
出来なかったことが出来るようになったり、以前より成長が見られたらそれだけで合格点をだしてしまう私達。
でも神の領域にいらっしゃる先生は、どんなに成長の見られる作品でも一つの通過点でしかないのだと思う。涌井先生のバレエは日々進化する。先生のバレエの中に完成という言葉はないのだろう(尋ねたことはないけど・・苦笑)。
「もっと!もっと!」こんな片田舎のバレエ愛好家たち(?)にまで、何かを伝えて下さろうとする先生。そんな先生の指導を受けられることを、心からありがたいと思う。

最近、「あーと」の出入りのバレエ用品メーカーの担当者が、変わった。
いつ涌井先生とお目にかかれるか、多分彼は、とてもドキドキしている。
その彼が、「社長、涌井先生が鹿児島にお越しになるきっかけってなんだったのですか?」と素朴な疑問を投げかけた。私はありのまま、下手な字で長い長いお 手紙を書いたこと、先生から「私でいいんですか?」と穏やかに電話があった当時のことを話した。彼は言う「僕なんかが涌井先生ほどの人に"私でいいんです か?"なんておっしゃられたら、とてもお言葉どおりには受け取れないよなぁ・・・」
「あ・・・・」。今更ながら、やってもうた・・・と自爆しそうになった。

初対面で私を自爆に陥れようとするこの男・・・面立ちは優しいが、アナドレナイ・・・(苦)。
イヤイヤ問題はそんなことでなくて・・・・(爆)
そーだよなぁ・・バレエの神様はやっぱり雲の上の人だよなぁ・・・。しばらく悩んでみたものの、やっちまったものしょうがない(苦笑)。
先生は業界の常識にとらわれない私の奇抜な発想(多分、業界の中では失礼なこと・・苦笑)を楽しんでいらっしゃるノダ!(もしも私の思い違いでも、この際、そー考えよう・・ウン!)だから大丈夫なのだ!と、開き直ることにした(早い?)

さて、お待ちかねの(誰が待ってるの?)一幕の前日リハーサル・・。
ふぅー・・・。
ほっとしてしまった私がおバカだった。全く学習能力に欠ける生き物だ。

先生の目って、絶対に2つじゃない!と思うほどいっぺんにいろんなことを発見してしまう。普通の先生じゃ気がつかないところまでチェックチェックの大嵐(そうそう、なんてったって涌井先生はバレエの神様だから・・・☆)。
マイクにガナリって名前、一体誰がつけたんだろう・・ぴったりだ(苦笑)。
あまりの勢いに私のお粗末な脳はそんなことを考えていた(爆)。

それにしても、小さな子ども達の反応が恐ろしく鈍い。ひょっとしてヤツラ・・・??と、私が立ち上がったとたん、先生の声が飛んだ。
「先生の言うこと聞いてるの?聞けないなら、先生 もう帰ります!!」
えっ?・・・。カ・エ・リ・マ・ス・!・!?
「ギャアァァァーーー!!」(注:私の心の叫び)。

1998年、初めて先生と出会ってから、ご来鹿のたびに熱い指導を頂いてきた。「この作品どうしてもせなあかんの?」を初め、2文字の恐怖とも言える「ヘタ!」さらに3文字の「アカン!」「シラン!」「フトイ!」4文字になると「キーターナーイー!」etc・・・。
数限りないワクイ名語録(?)は私の記憶の引き出しにしまわれている。しかし、この5年間
「先生 もう帰ります!!」なんて恐ろしいお言葉は賜ったこともなかった。一瞬、頭の中をS先生が涌井先生について書かれた「食らいついてくる子だけを私は見る・・」という、背筋の伸びる文面がよぎった。

「み、見捨てられるぅーーー」。

つづく(次へ)

クラシックバレエ
あーとかんぱにぃ
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