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第8話

2,3日前"ミチ"の携帯が不在着信に表示されていた。
彼女はわがスタジオの会員ではあるが、大学院に進学する勉強のために休会したのをきっかけに、レッスンから遠ざかっていた。このサイトをこっそり覗いてい たという(今もきっとこっそり見ているのだろうけど・・爆)。舞台の日にちが近付くごとに、いても立ってもいられなくなったらしい。「舞台裏に入りたい」 と全ての勇気を振り絞って私に電話をしてきたのだった。運の悪いことに、たまたまその時間、車を運転していて電話に出ることができなかった。ご丁寧にメー ルまで入っていた(苦笑)。
彼女は私を恐れているらしい(ホントは優しいのに・・・爆)。

当然すぐさま電話をした「ミチ○○、手は足りない、援護せぇ!!」。「ハイ!」嬉しそうな彼女の声が響いた。最後に残っていた小道具、ドロッセルマイヤーのボストンの仕上げと前日のリハ、本番当日の援護を引き受けてくれた。

リハーサルのこの日、ミチが駆け込むように仕上がったボストンを抱えてホールに入ってきた。「社長遅くなりました!何をしたらいいですか?」。ボストンの仕上がりは完璧だ。
前もって正月を返上して書き上げた進行表をわたしてあったので
まじめな彼女はきっと予習は完璧だろうと「ミチ○○ 上手袖を援護!」と指示を与えた。
「ハイ!」元気な返事をして、上手の袖へ駆け込む彼女。

もうひとり開設当時からの会員、ミカちゃんからもメールが入っていた。「明日(本番)は仕事が遅番なので午前中、手伝えます。何時に来たらいいですか?」
レッスンに来ないのはいただけないが可愛いやつらだ(爆)。

「あーと」がホール本番を迎えると、どこからともなく舞台裏を固める人間がわいてくる。
そういうメンバーに恵まれていることを本当にありがたいと思う。

さて、緊張の舞台上。刻一刻と大変な状況に陥っている。先生の声が響き続けている。
私は上手と下手、さらに客席、舞台上と・・ほとんど役に立たないのに(爆)ただひたすら走り回っている(苦笑)。

前回の涌井先生のリハーサルで確か先生は舞台の神様や明かりの神様におっしゃっていた。
ミミをダンボにして聞いていたのだけど・・。
「ここの子らは、踊りは大丈夫やから 一幕のお芝居の部分に力を入れましょう!」
あれは、私の空耳だったのだろうか?
舞台の神様も何度となくフォローを試みてくださるが、撃沈・・。
大丈夫だったはずの「踊り」の部分で、かなりなヒートを見せる涌井先生。
一幕に入ったら一体どうなることか? 私の不安は募る一方で、時間だけがすぎていく。
あーー神様、どうか無事に本番を迎えられますように・・。

こんなときの私の心境はとても複雑だ。いつも私自身がボロクソに言っているのに、先生に一声発せられると、一人であたふたしている(苦笑)。その反面、先生に厳しく指導していただけることをとてもありがたいと思う。

私の願いもむなしくヒートはおさまるどころか燃え上がるばかりで、問題の一幕部分に突入する事になった。衣裳がえのために、しばし休憩タイム。そろそろと涌井先生の傍に近付いてみた。なんと言っていいか分からなくて「先生、スミマセン」と言っていた(苦笑)。
「お茶のみません?」先ほどまでのヒートはどこへやら、いつもの穏やかな先生がそこにいらした。

単純な私は一気にホッとした。

遠巻きに私と先生を見つめている黒服軍団(お母さんたち)も、今年は出演者でないはずの"ミチ"も、心なしか青ざめているようであった。

つづく(次へ)

クラシックバレエ
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