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第20話

「あーと」のホール本番について、心得ていることがもう一つ。
それは、本番直前の集会(?)。今年は上手の袖で行った。
「今日まで、良く頑張りました。後は、舞台の上で思い切りハジケてください。何度も言ってきたけど、今日の本番は今日しかないんだよ。今日のために皆一生懸命やってきたんだから、最後の最後まで気を抜くな!後悔する事のないように」と声をかける。
黒服軍団には「最後の最後まで援護をよろしく」と・・・。

忙しそうに働いている舞台の神様や明かりの神様に遠くから全員で目礼をする。

緞帳が下りているから、見えないのだけど、私は舞台上から、その見えないお客様に向かって頭を下げる。今頃はバレエの神様も客席にいらっしゃるだろう・・。

「まもなく本ベル、入ります」舞台の神様の声で本ベルが鳴る。
ホンの10秒ぐらいだろうか、本ベルの音を聞くと私の気持ちに変化が起きる。
理由は良く分からないけれど、一切の不安が消えるのだ。今までの舞台も全部そう。
ドンと来い!みたいな気持ちに似ている(爆)。

走り回る私だけど、緞帳が上がる瞬間は見逃したくない。
この全幕の緞帳を上げたいばかりに、この3年、無謀とささやかれながらも、走り続けてきたのだから。

明かりの神様が当ててくれる神秘的な明かりの中に、子ども達が浮き上がってくる。
精一杯全身を使い堂々と、お客様の気持ちを舞台へ舞台へと惹きこんでいってくれた。

どうしても前の人に並べなかった彼女たち、稽古場より幅のあるところで踊ることが不慣れで、隣の人にいつの間にか近づいてしまっていた子ども達、前に広がる客席に圧倒されて、顔を上げることが出来なくて、下を見たり、横を見たり、忙しかったデビュー組み。
そんなゲネまでのことが、嘘みたい(やれるなら、初めからやってくれ・・苦笑)。

涌井先生の作られる舞台には、曲と曲の間や背景の芝居も不自然なことが何一つない。
ふできな「あーと」なダンサー(?)たちは、不自然なことばかりだった(泣)。
それでも、ゲネよりは、なんとか自然な動きになっていたような気がした。

どうしても、大人の数か足りなくて、一幕出演を私から任命されたコウコちゃん。
本人は「どうせ出演するなら・・」と貴婦人を望んだが、即効却下され紳士役に決まったのが11月ぐらいだっただろうか・・。
クララのお父さんが見つからなくて(本物(?)の男性でやりたかったから・・)
コウコちゃんは知らぬ間に「お父さん」役に変更されていた。
そのことを告白(?)したのが新年明けてから・・・。「えー!!」と驚き
しばらくは「嫁入り前の純情無垢な娘なのに、前の舞台では床屋で軟派なバジル・・・まさかとは思ったけど、よりによってお父さん・・。あんな大きな子供が 二人も・・・。もう・・あたしはお嫁にいけない!(泣)しかも、なんで私は知らないのにパンフレットにはお父さんのところに私の名前がかいてあるの??? (号泣)」と、嘆いていた。
そんな彼女に、私達は声を揃えて言っていた。
「なにもかも気のせいだ。深く考えることはない・・・」(?爆)。

しかし、そこは「あーと」きっての男役トップスター。本番当日、付け髭を用意し、バリバリな男役メイクに身を固めていたのだ。
さらに「本番には、やる女(?)」の異名を持つ彼女・・・。ドロッセルマイヤー登場後の男性同士(?)の力強い握手には、さすがの私もあっけにとられた(爆)。

一幕パーティーの部分が終わってから、雪の景までの時間が黒服軍団の腕の見せ所である。
パーティーの衣裳→着ぐるみ→雪の衣裳。出演者が少ないのは、なんとも厄介だが、ぼやいている暇はない。衣裳替えが混雑すると思われる上手に飛び込んだ。
「あ・・・ヤバ」
黒服軍団が全員、上手に集結!?まさかと思ったが、誰かに聞いている暇はない。
そのまま下手の袖まで大爆走。

案の定、取り残された出演者(子ども達)が、おのおの衣裳替えに慌てふためいていた。
「落ち着けーー!」

舞台スタッフがスモークマシーンに手をかけている。彼女たちはスモークとともに舞台に入らなければならない。万が一間に合わなかった場合の段取りは用意してあるが、踊り手のためには、予定通りで進行できたほうがきっと心強い。

「慌てるな!大丈夫だから」

子ども達に声をかけていると言うより、自分自身に言い聞かせていた私だった(爆)。

 

つづく(次へ)

クラシックバレエ
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