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第1話

本番前日から当日にかけて、私は良く走る。舞台 の注意事項に「ホール」では走らない!と自分で厳しく書いているにも関わらず、バタバタと走りまくっている(周りは大目に見ている・・多分)。日常がほと んど動かないから、私にとっては重労働(苦笑)。踊ってもいないのに本番が終わると私は物凄い筋肉痛に襲われる。そしてなぜだか,アチコチに怪我までして いる。青タン(売ったときに出来る青い内出血)は当然。へ?と思うようなところに毎年出来ているからあまり驚かない。今回は今までにない負傷をおった。い つやったのかも分からないが右手の小指がビックリするくらい腫れていた。本番が終わるまで全く気がつかなかった。本番が無事に終わってホールの事務所にお 金を払いに行ったとき、何だかお金が普通に数えられなかった。「あれ?」とおもって小指をみたら、私のほそっこい小指がでかい!?事務所の優しいお姉さん が「川留さん、大丈夫?腫れてるよ、小指・・・」。
「うん・・痛いみたい・・」。上手くお金が数えられなくて事務所のお姉さんに数えてもらった。腫れているのを見たらズキンズキンと痛くなった(泣)。ろれ つの回らない私を見かねて優しいお姉さんは、冷たいお茶を飲ませてくれた。いい人だ。青タンも小指の負傷もどこでいつやったかなんて定かではない。でも証 拠が残っているから何かあったには違いない。小指の様子はどう見てもホールのドアで挟んだ感じ・・。日に日に痛みは薄れているから折れてはいないのだろう けど、ミエチャン(PC)を使うときいささか不便だ。

腫れるほどの小指の負傷を気づくことも出来ない舞台裏の壮絶なドラマ・・・しばし、お楽しみ(?)いただきたい。

涌井先生にお越しいただいたのは、今回は本番の前日。さっそーと到着ロビーへ出て見える先生はとってもカッコいい!誰に頼まれてもこの役は絶対に譲らないと決めている。
涌井先生の便の到着のアナウンスが流れたら、私は自然にルルベになる。うーんと背伸びをして一刻も早く先生を探そうとする。後光をバックに先生がにっこり 笑ってくださって私に手を振ってくださるのだ。そのとき周りにいたお迎えの人が必ず私を振り返る。私は後ろにひっくり返らんばかりにそっくり返って周りの 人に威張り散らす・・(私の先生よ、かっこいいでしょう?)。注目をあびつつ、先生のもとに駆け寄ってご挨拶。よくわかんないけどここでひとまず達成感☆ 社長をやっててヨカッタ・・と思う瞬間だ(爆)。
お食事をご一緒していただきながら、今回の舞台へのお問い合わせが多いことをご報告した。先生はとっても喜んでくださって「よし!がんばろ!」とおっしゃった。
今回の舞台は過去にないほど問い合わせが多かった。今までも新聞やラジオで同じように告知をしたり、貧乏人にとっては大金を払って電車の中吊り広告をしたりいろいろ試してみたけれど、集客はいつもイマイチで満席になることはなかった。
でも今回は整理券の問い合わせの電話がひっきりなしにかかってきていたのだ。全幕だからなのかなんなのかよく分からないけど・・手ごたえとしてお客様が多そうだ。
私としては嬉しい反面、本番が期待に応えられなかったらどうしよー・・と不安もあった。
だからもう涌井先生におすがりするしか道はなかったのだ。
今までは先生の「よし、がんばろ!」という言葉に「先生、ほどほどに・・」とか「お手柔らかに」と付け加えていたけれど、期待して見に来てくださるお客様にがっかりしてもらっては困るから、素直に「どうぞ、ビシビシおねがいします」と頭を下げた。
出演者が泣こうがわめこうが壊れようが・・そんなこたあ かまっちゃいられない。
「優しいことは優しくない」という哲学を自分に言い聞かせ、バレエの神様涌井先生に「あーと」の全てをゆだねたのであった。


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クラシックバレエ
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