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第14話

   

その他の段取りも気になるので、例のようにそーっとそーっと(苦笑)、客席 を通って受付の様子を見に行こうと重い足を引きずり階段を上がった。そこ(立ち見のあたり)に受付担当の二人とともにヒロさんがいてゲネプロをみてた。彼 はウチのストリートクラスのインストラクターである。今回ストリートクラスはホールには立たないのだけれど、舞台の援護に来てくれたのだ。
「おはよ・・来てたんだぁ」そういって私は彼に背中を向けた。肩を揉め・・という合図だ(爆)。「舞台のことは、なんも出来んから、俺ロビー手伝うわ」といいながら、私の肩をモミモミモミモミ。
「あーそー、宜しくね」。出演者のシャキシャキできない様子にいつの間にか怒りを超えて、落ち込んでいる私。頭の中には「涌井先生に見限られる・・・・」という恐ろしい言葉が張り付いていて離れないから、異常に暗い。

ふと視線を上げたら、目の前でナカシマが涙している。・・・?
「どーしたの?」「皆、凄いですぅ・・素晴らしいですぅ」
「え・・・?」
ナカシマは今時の人にしては、かなり感動しぃの生き物だ。
そんな純粋(?)なナカシマを羨ましく思いながら、その日初めて遠目に舞台を見た。

「う・・・そ・・・?」。「ナニ?・・コレ・・」

間違いなく私の心肺機能はそのとき、一時停止した。
死んだらたまんないから、あわてて大きく深呼吸した。
ドックンドックンと動脈から血液が送り出されるのを感じたくらいだ。

視線の先に、物凄い舞台芸術の世界が広がっていたのだ(注 当然出演者は別にして)。
地元鹿児島でこんなスゴイ舞台装置見たことない。プロのバレエ団がやってきても、ここまで追及されたハコに魅せられた記憶はない。道具と明かりと衣裳が重なり合って、なんとも表現しがたい世界を繰り広げているのである。

そりゃ、たった今まで、見ていたさ。でも、そこは舞台の真下だったし、人間(?)を見ていたから・・・。そりゃ、昨日大声張り上げて、ドロップつったさ、スゲエとおもったよ。
でも、こんなにスゲエなんて・・・ドボちよ~

明かりの神様がインカムをつけて明かりの仕込み表と舞台を真剣な顔で客席から見つめている。時折、ボソボソとインカムから明かりのスタッフに指示を出す。 それを受けて舞台の雰囲気がガラッと変わる。冷たい冬の色、暖かな家の中の色・・・。舞台を何かで仕切っているわけでもないのに、同じ舞台にいくつもの シーンを明かりひとつで作り出している。明かりの神様のその様は、惚れ惚れするほどカッコイイ。

今年は一体何人の人がこの3人の神様の魔法に鳥肌を立てるのだろう・・。

イヤイヤうっとりしている場合ではない(苦笑)。

よくよく見ると私の貰った見積書にない道具がモロモロあるではないか!
きっと、明かりだってそーなんだ。
思い余って広報部長につぶやいた。
「見積もりに載ってないヤツがいっぱいあるんだけど・・・」
二人とともに感動に浸っていたであろう彼女は、ただ一言「はっ?」と・・・。

その時、やっと分かった(反応が一番鈍いのは私かもシンナイ・・苦笑)。
昨日、涌井先生は舞台のお金のことをしきりに心配して下さっていたのだ。「あーと」がどれほど貧乏か涌井先生は一番良く知っていらっしゃる。舞台というものにどれほどのお金がかかるかも当然ご存知だ。そして舞台装置の価値もまた熟知される先生。
しかも私はおバカで意地っ張りだから、この本番の入場料だって無料だ。舞台装置にかかるお金を出演者から徴収してもいない。
このスゲエ舞台のお金をどーやって支払うのか・・・先生が心配されるのは当然といえる。

何しろ、私もこの世界にデビューして5年モノだから、まだまだ修行が足りなくて、近くで見てもそのハコの壮大さを理解できない(苦笑)。去年、キトリの親 父役(なんでオヤジなんだか・・爆)で、初(?)舞台を踏んだのだけど、その時だって、あんなスゲェセットの中で親父に扮しているなんて思いもしなかっ た。あとでビデオをみてビックリ驚いたぐらいだ(爆)。そんなオトボケな私の率いる「あーと」の行く末を先生は案じていらっしゃったのだ。

しかし、そーいった意味では、そーいうときあまり後先を考えない生き物の私・・(苦笑)。
お金のことは後々考えることにした(いいのかなあ・・・苦笑)。
今しなければならないことは、この壮大な舞台装置のなかで、いかに出演者を前面に出すかということだ!3人の神様の思いをちびっとも無駄にしてはならない!

肩の凝りもダイブほぐれたので、「サンキュッ!」と何故か元気良く礼をいい、再び気を引き締めて、袖へと駆け込む私であった。

ぶん殴ってでも、ヤツラ、シャキッとさせなならん!!

 

つづく(次へ)

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