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第10話

転 がるように客席の階段を駆け下りて、さらに舞台へ駆け上がった。ここで私が先生のお言葉を復唱(?)。「あんたたち!なんで先生のおっしゃる通り出来ない のーーー!!頭、使いなさいって、いつも言ってるでしょ!!おバカになってもいいの?」ワナワナと震えるこぶしを理性で抑えつつ・・(どこが、復唱なんだ よ・・苦笑)。

しかし、当の本人たちは、ぽや~んとしてる。中には怒り狂った私の目を見て微笑みかけるヤツさえもいた。

「・・・」。

幼稚園児と小学校低学年の彼女たち、許容範囲を超える要求が続くと、異次元の世界に旅立つのが得意技(苦笑)。普通だったら眠っているかもしれないこの時 間、現実と夢のハザマの心地よい空間にいるらしい。しかもかわいらしいお衣裳に身を包み、舞台上はゴージャスなドロップや豪華なクリスマスツリー、彼女た ちがこよなく愛するであろう、キラキラなヒカリモノに囲まれている。おそらくお姫様にでもなっているに違いない。・・・。

ハアァー・・・。

涌井先生の「先生、帰ります!」という、シゴク緊迫するお言葉を頂戴しても、彼女たちは覚醒する様子を見せない。

先生は、何も特別に難しいことを要求されたわけではない(何しろ、ここは「あーと」だし・・苦笑)。
ぶっちゃけた話し「小さいお友達どうし手をつながないで~」とか「横一列に並んじゃダメよ~」とか「小さいお友達が団子になったらおかしいわよ~」。
ことの起りは、それだけなのだ。なのにヤツラはしっかり手をつないで、しかも、見事に子供同士、横一列に並んでいた。いついつまでも・・・。

体を押したり、ひっぱったり、必死で場所を変えても、元の位置に戻ってくる・・。
冬場の動物の本能かしら??どうしても寄り添っていたいらしい・・・(苦)

「縦横の列を揃えないといけないのは、踊る時だってばぁーー!!」。

加えてデビュー組みの多い紳士、貴婦人は、涌井先生がいらっしゃる事で、すでに大パニックに陥っていて、小さい子ども達をフォローする余裕などありもしない・・。

「時間がないので、次、行きます」。ガナリから冷ややかな声が響いた。
「えーっ!?」
こういう時、本当に次に進んでもいいものなのか、どうなのか、私は悩んでしまうのに・・
「あ・・・」
出演者たちは、まるでロボットのように次へと、・・・進んでいってしまった。

素直と言うか、単純と言うか、言葉の重みを感じないと言うか・・鈍感と言うか・・・。

深いため息とともに、「コイツラ、本番が終わったら根性入れ直さんとイカン!!」と決意を固め、鼻息も荒く舞台から降りた。

そーいえば、前回のリハーサルのときにも頭を抱える事件が起ったことを思い出した。
全幕が初体験の「あーと」な(?)ダンサー。同じ一幕の場面で、「表現が小さすぎる!」と
注意が飛んだ。それでもあまり変わらない小学生ダンサー、ついには「これだけ言っても、出来ないようですから、キャスト 代わってもらいます!」。
「へッ!?」舞台の神様も明かりの神様も私も当日の伝令係も一瞬のうちに血の気が引いてお互いの目を見つめあったりした。しかし!当の本人たちは、ショッ クを受けていない模様。こっちのほうが聞き違いかと思うほど、普通に一幕を続けてた。思い余って伝令係に質問、「ねえ・・アイツら、先生がおっしゃってる こと正しく理解してると思う?」
「たぶん理解していないと思います」。・・・。

日本語を正しく理解できない、言葉の重みを感じない、今時の人たちの、この現象・・。

一体どうやったら、食い止められるのだろう・・。
 

つづく(次へ)

クラシックバレエ
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