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第5話

   
舞台上ではドロップ(背景幕)を吊る作業が続いている。舞台スタッフを前日雇えていないため、舞台の神様が難儀している。「吊るの手伝っていいですか?」「ええ、もちろん!宜しく!助かります」。舞台の神様に念のため確認してから、ドロップに手をかけた。

手伝っていい事と手を出してはいけないことと、舞台スタッフの仕事は危険を回避するためや段取りを狂わさないためにさまざまだ。だから例え簡単に出来るこ とでも自分の判断で動いてはいけない。面倒でもなんでも舞台監督(舞台の神様)に指示を仰がなければならないし、様々な報告を怠ってはいけない(と、私は 思う)。お許しを貰ったとたんに私は叫んだ。「お母さんたち!ボーっとしてない!舞台に上がって!ドロップ吊るよぉーーー」。良く分からないお母さんたち は、客席でまごまごしている。「頭つかえ!頭! 頭の悪いやつと働けないやつは"あーと"では生きていけないよ!さっさと上がる!お金出せないんだから、 体で奉仕せな!!」こんなときの私の毒舌は、とどまるところを知らない(苦笑)。大声で叫ばれて、条件反射で上がってくるお母さんたち。涌井先生の唖然と された顔が視界に入ったけれど、気がつかないフリをした(叱られたら・・怖いから・・苦笑)。
黙々とドロップを吊る私の傍で、「どーやって結んだらいいんですか?」と一人のお母さんが私に尋ねた。「ハァ!? 見たら分かるでしょ?脳みそ使わんと 頭、余計悪くなるよ」。私って限りなく意地悪な生き物だ。その時、舞台の神様がつぶやいた。「川留さん、コエェーーよ(苦笑)」。チョット見回してみたら 先ほどご挨拶をしまくった舞台スタッフの皆さんも、心なしか白い目になっていた。
「あ・・・」。後悔しても、もう遅い、出きるだけ満面の笑みで「ホントは優しいのよぉーー」とブッてみたけど、誰も信じてくれなかったと思われる・・・・(爆)。

ドロップ(背景幕、袖幕)は、すぐに外せるように、けれども絶対に落ちてこないようにそしてゆがみが出ないように、吊るのが基本である。「かた結び」と言うのだと思うけど・・・(多分)。そして紐という紐は舞台奥の方向におとす。

私が大声を出すときは、2種類あったりする。つかれきっているお母さん達や出演者の緊張感を呼び覚ますためとマジギレしたとき・・。聞き分けにくいとみえ て、わが「あーと」の面々は、とにかく私の大声に条件反射で動けるようだ(立派)。声が低いのも、でかいのも、さらに口がわるいのも・・十分活用できてい る(爆)。

ホールでの練習は平日だったこともあり、一幕の社会人出演者が仕事で間に合わないため「雪」からやることになっていた。涌井先生が、舞台の神様に伝えてくださった。舞台の神様は、とっとと雪の景を作り出す(はえぇ・・)。

舞台メイクが上手く出来ないお母さんたちのために、私の知り合いのプロのメイクさんに本番の援護を頼んでいた。仕事と言えるほどギャラも払えないのに生真 面目な彼女は前日のこの日、打ち合わせというかメイクの確認にわざわざ来てくれた。今までのメイクの写真を見てもらったらそれを元にデッサンを仕上げてい く。傍らで見ていて「プロってすごい・・」と感心した。明日の全幕はきっと、皆美しくなる・・
一つ心配事が減って、少しだけ気が楽になった。


つづく(次へ)


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